東大ら,相対性理論による標高差の精密測定に成功

東京大学と国土地理院の研究グループは,直線距離で約15㎞離れた東京大学(東京都文京区)と理化学研究所(埼玉県和光市)に光格子時計を設置し,2台の時計の相対論的な時間の遅れを高精度に測定することで,2地点間の標高差を5cmの精度で測定することに成功した(ニュースリリース)。

光格子時計は,東京大学 香取教授が考案した,レーザー光を干渉させて作り出した「光格子」と呼ばれる,光の波長より小さな領域に原子を閉じ込める高精度な原子時計で,次世代の「秒」の定義の有力候補として世界中で研究されている。

「秒」の定義に求められる時計の「再現性」を担保するためには,その時計の「振り子の振動数」を他の研究機関に伝送し,複数の研究機関で「振り子の振動数」の同一性を検証することが重要となる。

一方,アインシュタインの一般相対性理論によれば,異なる高さに置かれた2台の時計を比較すると,低い方の時計は地球重力の影響を大きく受け,ゆっくりと時を刻む。

この結果,超高精度な時計の遠隔比較では,時計の再現性の確認にとどまらず,従来の時計の概念を超える「相対論的な効果を使った標高差測定(相対論的測地)」という応用を拓く。

研究グループは,先行して開発した「低温動作ストロンチウム光格子時計」を東大に1台,理研に2台設置して光ファイバーでつなぎ,遠隔地比較を行なった。

同じ高さに置かれた理研の2台の光格子時計の振り子は1×10-18で振動数が一致した。一方,東大の時計の振り子は理研よりも1,652.9×10-18だけゆっくり振動し,これから2地点の標高差1,516cmが算出された。

この「相対論的測地」の結果は,国土地理院が行なった水準測量と5cmの誤差範囲内で一致し,世界で初めて遠隔地時計比較によるセンチメートルレベルの標高差計測に成功した。

水準測量では,短区間の測定を繰り返して測量するため,長距離では誤差が累積するが,時計比較の精度は距離が長くなっても累積誤差は生じない。

論文では,各地に設置した光格子時計が,将来,新たな高さ基準「量子水準点」を形成し,それらをネットワーク化する「時計のインターネット」の手法を提案している。

これにより,火山活動による地殻の上下変動の監視や,GNSS(全球測位衛星システム)と補完的に利用できる超高精度な標高差計測システムの確立など,安全・安心に向けた社会基盤への実装も期待されるとしている。

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