岡山大,人工網膜の治験に向けて有効性を証明


岡山大学の医工連携研究グループは,“世界初の新方式”である岡山大学方式の人工網膜OUReP™が,ラットの視覚を回復することを視覚誘発電位によって初めて証明した(ニュースリリース)。

同大は,新方式の「色素結合薄膜型」の人工網膜を2002年から研究開発してきた。これは,光を吸収して電位差を出力する光電変換色素分子をポリエチレン薄膜(フィルム)に化学結合したもので,電流を出力するのではなく,光を受けて電位差(変位電流)を出力し,近傍の神経細胞を刺激するもの。

松尾准教授らの研究グループは,失明して間もない6週齢の若い網膜色素変性ラットに,OUReP™を植込み,4週後と8週後の視覚誘発電位(大脳の後頭葉にある視覚に関係する部分の電気的活動)を記録した。その結果,光電変換色素の付いていないフィルムを植込んだ対照ラットと比べて,視覚誘発電位の振幅が大きいことが分かった。

これは人工網膜によってラットの脳の中で神経細胞の電気活動が起こっていることによるもの。さらに研究グループは,視細胞がまだ残っている4週齢の網膜色素変性ラットの眼球に,人工網膜OUReP™の部材として使用されている光電変換色素を注射したところ,本来は死んでいく視細胞が死なず,注射した光電変換色素に神経細胞保護作用があることが分かった。

これは,以前の研究で6週齢の網膜色素変性ラットに人工網膜を植込み,5か月後の網膜の状態を観察したところ,網膜神経細胞死(アポトーシス)が抑制されていることが分かったことと一致する。

これまでに,OUReP™には毒性がないことを,生物学的な安全性評価によって証明している。今回の一連の研究成果は,OUReP™の有効性をさらに補強するものであり,世界中に500万人(わが国には10万人)いる,網膜色素変性患者たちに再び光を届ける過程がより一歩,確実に前に進んだものとしている。

OUReP™の製造管理と品質管理は,同大が確立している。現在,岡山大インキュベータにあるクリーンルームの環境の中で,人工網膜の製造ラインが稼働している。この製造ラインで作ったOUReP™を治験機器として岡山大学病院に提供する予定だという。

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