ソニー,業界最小画素のTOFセンサーを開発

ソニーは,業界最小となる10µm角画素の裏面照射型Time of Flight(TOF)方式距離画像センサーを開発した(ニュースリリース)。

これは,2015年に買収したSoftkinetic Systems S.A.(ソフトキネティックシステムズ社)のToF方式距離画像センサー技術とソニーの持つ裏面照射型CMOSイメージセンサーの技術を融合し実現したもの。

一般的にToF方式とは,光源から発した光が対象物で反射し,センサーに届くまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで,対象物までの距離を測定する方式。ToF方式を採用したイメージセンサーは,画素ごとに距離情報を検出し,高精度な距離画像を取得できる。

さらなる精度向上のためには,反射光を効率よく捉えるとともに,より高速に距離測定の処理を行なう必要がある。また,低消費電力化のためには,反射光の集光・利用効率を向上させ,光源の出力を抑えることが求められる。

ソフトキネティックシステムズ社が保有する,ToF方式を実現する画素技術CAPD(Current Assisted Photonic Demodulator)は,反射光信号の読出し精度を上げるために,画素内ドリフト電流を用いた高速処理が可能な独自の画素構造を採用している。この構造により各画素の測距精度が上がり,遠距離でも正確な測定と距離画像の取得が可能となる。

今回ソニーは,このCAPDとソニーの裏面照射型CMOSイメージセンサーの画素技術を融合させることにより,業界最小となる10µm角画素の裏面照射型ToF方式距離画像センサーの開発に成功した。

一般的にToF方式の画素は,画素内に複数の読み出し回路を配置するため,表面照射型CMOSイメージセンサーの場合は,受光部(フォトダイオード)の上の多くのトランジスタや配線が対象物からの反射光の妨げとなり,測距の精度を落とす原因となる。

ソニーは,裏面照射型CMOSイメージセンサーの画素技術を組み合わせることで,画素の有効開口率を向上させた。これにより,表面照射型の15µm角画素と同等の集光効率を,裏面照射型の10µm角画素において実現し,距離画像センサーの小型化を図りながら,より高精度な測距性能を可能とした。

また,高い集光効率により,光源の出力を抑えることができ,距離画像センサーモジュールの低消費電力化と小型化に貢献する。

さらに,裏面照射型導入に合わせて画素構造と画素内配線をToF方式に合わせて最適化することで,測距に必要な位相差の検出をより高速化することが可能となった。

反射光の利用効率を維持したまま駆動周波数を従来比で2倍(100MHz)に上げられるため,同一の距離においては,精度が向上するため従来よりも高品位な距離画像が得られる。また,従来と同一の精度を維持した場合は,従来比21.5倍の距離までの距離画像が得られる。

近年,AR(拡張現実)/VR(バーチャルリアリティ)のほか,自律的な動作が必要となるロボットやドローンなどの市場では,より正確な距離画像の取得が求められる。

この開発品は,低消費電力,かつ小型ながら高精度な測距性能を実現することにより,今後DepthSense®商品群として,ジェスチャー認識や物体認識,障害物検知など,ToF方式距離画像センサーの応用領域を広げていくとしている。

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