次世代自動車を担うレーザーヘッドランプとLiDARの開発状況

■注目のLiDAR

今後の自動車を語る上でもう一つ重要な光技術に赤外線センサーがある。これまでも追突防止や誤発進防止センサーとして自動車に採用されてきた赤外線センサーだが,自動車業界が自動運転という新たなステージを迎えるにあたって,より大きな役割が期待されている。

現在,自動車業界ではADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)と,その延長線上にある自動運転技術が注目されている。特に自動運転技術はgoogleなどのIT系企業も参入を計画するなど,新たな市場としての期待も高い。

NHTSAによるADASのレベル分類
NHTSAによるADASのレベル分類

ここでADASについて簡単に説明をしておく。アメリカ合衆国運輸省(NHTSA)の分類によれば,ADASには0~4までのレベルがあり,このうち0は運転にシステムが全く介入していない状態で,レベルが上がるにつれて介入度が上がり,レベル4ではシステムが全ての制御を行なう完全自動運転となる(日本の国交省もNHTSAの分類をもとに同様のレベルを設定している)。

このうち,現在はレベル1が達成されている。追突防止の自動ブレーキや,前車との車間に応じて速度を調整して追従するクルーズコントロール,車線から外れそうになると一時的に自動操舵を行なう車線逸脱防止システムなどがそれで,実際に市販車に搭載されている。

「セーフティセンスP」が搭載される新型プリウス
「セーフティセンスP」が搭載される新型プリウス

こうしたレベル1を実現しているシステムのセンサー構成をトヨタと日産の例で見てみる。トヨタは2015年よりADASのシステムとして「セーフティセンスP」と「セーフティセンスC」の2種類のパッケージを用意している。「セーフティセンスP」は高級車および新型プリウス,「セーフティセンスC」は大衆車に搭載される。

「セーフティセンスP」はカメラとミリ波レーダー,「セーフティセンスC」はカメラと赤外線レーザーレーダーで構成される。共に自動ブレーキ,ADB,レーンキープを主な機能としており,「セーフティセンスP」ではこれらに加えてに人検知,全速度域でのクルーズコントロールが可能となっている。

なお,「セーフティセンスP」はデンソー,「セーフティセンスC」はContinentalが供給している。

日産は車種ごとに装備が異なるものの,高級車ではミリ波レーダーを中心に,大衆車ではカメラを中心にしてADASを構成しており,赤外線センサーについては,レーザーレーダーを軽自動車に装備するにとどまっている。

軽自動車に搭載された赤外線レーダー
軽自動車に搭載された赤外線レーダー

このように,現在高級車に搭載されるADASの多くはミリ波レーダーを中心に据え,カメラや赤外線センサーがこれを補う形で構築されている。

赤外線センサーは,軽自動車や大衆車などでレーダーとして単体で装備され,低速度域での自動ブレーキや誤発進防止など限定された機能で使用されることが多い。

補助的な役割を担う赤外線センサーだが,ADASのレベルを上げようとすると話は変わってくる。

NHTSAのレベル2と3では,ドライバーは一定の条件下で運転を車に任せることができる。つまり,ドライバーは周囲の状況により,ハンドルやアクセルから手や足を離して運転を車に任せることが可能になる。

さらにレベル4では,完全な「自動運転」となるが,これらのレベルは現在のADASでは実現できない。

一部分/完全にかかわらず,自動運転では信号機の色や標識の内容,右折・左折レーン,分離や合流など,多くの情報を収集・分析する必要がある。現在のADASでは障害物の有無や距離は分かっても,こうした情報を総合的に捉えることはできないからだ。