岡山大ら,1ピコ秒の分解能で液晶分子を観測

岡山大学,京都大学,筑波大学,九州大学らは,新しい計測・解析手法を用いて,液晶分子に紫外線光を当て分子が動く様子を直接観察することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

液晶ディスプレーなどに産業利用されている液晶中の分子は,非常に高速で動くことができるため,ディスプレーは非常に速い信号も表示できる。液晶分子の立体構造を決定し,その機能の元となる分子運動を理解することで,さらに高精度かつ広範囲な液晶材料の開発が行なえると期待されている。

液晶分子の構造は一般に,光吸収や電気伝導などの機能に寄与するメソゲンと呼ばれる中心部分とアルキル鎖やポリエチレングリコール鎖などの運動性や柔軟性に寄与する炭素鎖部分に分けることができる。この機能の元となるメソゲンの構造を理解するためにX線回折法が利用されてきた。

しかし,液晶中の炭素鎖に埋もれたメソゲンの高速な動的挙動を直接的に構造解析する手法は全く存在しなかったため,液晶分子の運動を解析する新しい手法の確立が求められてきた。

研究グループは,液晶分子のπ拡張シクロオクタテトラエン誘導体に紫外線光を当て,液晶分子のメソゲンが動く様子の直接観察に初めて成功した。得られた構造解析の結果から,光照射後1兆分の1秒程度の時間スケールにおいて,非平面サドル型だった分子骨格が平面型へと動き,分子近傍の液晶構造が変化することが明らかになった。

これは1972年から予測されてきた励起状態芳香族性の発現を,構造解析手法を用いて直接的に裏付ける結果。

研究グループは,岡山大学で開発された時間分解電子線回折装置と九州大学で開発された時間分解赤外分光法を駆使することにより,名古屋大学と京都大学で開発された液晶分子の動的挙動を世界で初めて観測することに成功した。また,これらの観測結果は,筑波大学で行われたシミュレーション結果と良い一致を見せた。

電子線はX線に比べ軽元素に感度がよいため,時間分解電子線回折法は軽元素からなる液晶中の分子の動的挙動を調べる有力な測定手法になりえるという。

時間分解電子線回折法と時間分解赤外分光法を組み合わせた液晶分子の構造解析と動的挙動の直接観察は,これまでの概念を覆す新しい計測・解析手法。また,光照射後1~100ピコ秒程度の時間スケールにおいて発現する励起状態芳香族性が観測されたことは,この物質を基にした光機能性分子材料の設計方針に重要な知見を与えるもの。

この手法は,光応答部分を持つさらに複雑な生体分子やソフトマテリアルなどの分子の構造や,動的挙動の解明にも展開されることが期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 技科大,流動性の高い高複屈折液晶分子を開発 2017年12月06日
  • 東工大ら,分子の配向パターンを一段階で形成 2017年11月13日
  • 北大のレ バン コア氏,日本液晶学会論文賞を受賞 2017年10月02日
  • 九大ら,液晶の新たな秩序構造形成を実証 2017年08月30日
  • 北大,マイクロピクセル状の高分子安定化液晶を作成 2017年08月17日
  • 千葉大,光でほどける「らせん構造」を開発 2017年05月12日
  • 理科大ら,平衡状態で存在しない分子会合体を光で生成 2017年04月10日
  • DNP,米企業と液晶調光フィルムを事業化 2017年04月05日