京大,光超音波トモグラフィで3D血管地図を作成

京都大学の研究グループは,光超音波トモグラフィによる皮膚の精細な3D血管地図の作成に成功した(ニュースリリース)。

がんの切除や事故による怪我などによって組織に欠損を生じた場合,体の他の部分から皮膚や皮下組織と血管を付けた状態で採取し,欠損部の近くにある血管と吻合を行なうことによって組織の再建を行なう,遊離皮弁移植術が行なわれる。

皮弁移植術を成功させるためには,皮下脂肪内の血管走行を把握することが必要不可欠となる。しかし,超音波検査は脂肪内の血管には不向きで,CTやMRIは造影剤のアレルギーや被ばくが問題となる。

光超音波トモグラフィは,人体に害がないレベルの近赤外線光のレーザーを照射し,赤血球から発生した超音波を探知して血管を映像化する撮影技術。撮影に造影剤を用いないため,極めて安全に検査ができる。研究では,光超音波トモグラフィ技術を用いて大腿の脂肪内血管の描出に挑戦した。

光超音波トモグラフィでの撮影対象として健常な成人男性5名の大腿を選定した。光超音波では14平方センチの範囲の撮影に2分程度かかり,その間被験者は動くことができない。また,超音波検出器と撮影する組織の間に水を介在させる必要がある。このように撮影条件が困難なことに加えて,これまで光超音波を用いて大腿の撮影に成功した報告が無いため,どのようにして撮影するかが問題となった。

そこで,レーザー装置や超音波検出器を大きなベッドの床に埋め込み,寝たままの姿勢で大腿の撮影ができるように工夫した。その結果,大腿部皮下の血管を描出することに成功した。しかし,この方法では,皮膚直下にある静脈ネットワークと脂肪層の血管を判別することが困難だった。

そこで大腿皮膚面を自動抽出し,皮膚からの距離によって血管を削除したり,強調したりできる画像閲覧システムを開発した。その結果,脂肪内の直径0.5~1mmの細かい動脈を明瞭に描出し,筋膜を貫通した穿通動脈が,皮下脂肪内で水平方向や斜めの方向に樹木の枝のように広がって分布する様子を鮮明に描き出すことができた。さらに,深さの情報をもとに血管を色分けすることにより,3次元の情報を含んだ皮下血管の血管地図を作成することに成功した。

この研究は,光超音波トモグラフィが皮下血管の術前診断機器として臨床応用できる可能性を示したもの。この技術は造影剤にアレルギーのある患者や腎機能が悪い患者にも使用することができ,被ばくの恐れもない点で優れている。

現在,プロジェクションマッピングの技術を用いて皮膚に貼付可能な血管地図シートを作成するプロジェクトが進行中で,シートを皮弁手術に応用する臨床試験を行なっている。この研究成果とこの血管地図シートのプロジェクトを組み合わせることで,より安全で良質な手術方法の確立を目指していくとしている。

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