NICT,超解像顕微鏡の色収差補正ソフトを公開

情報通信研究機構(NICT)は、大阪大学、オックスフォード大学と共同で、超解像顕微鏡のための高精度色収差補正ソフトウェアを開発し,この技術を使用できるソフトウェアを公開した(ニュースリリース)。

超解像顕微鏡法の開発により,蛍光顕微鏡の分解能は飛躍的に向上したが,その結果,これまで無視することができた色収差(光の色ズレ)が問題として浮上してきた。

超解像顕微鏡法では,異なる生体分子を多色で染め分けることによって,異なる生体分子を別々の色で観察できる。分解能が低ければ多少の色ズレは気にならないが,分解能が向上すると僅かな色ズレでも,同じ場所にあるのか別々の場所にあるのか,全く異なった結論を導きかねない。

研究は,顕微鏡のレンズなどが引き起こす色収差に加え,観察対象の生体試料により引き起こされる色収差も計測し,補正できる手法を開発し,超解像顕微鏡法の色収差補正精度を従前から約10倍向上させることに成功した。従来は,人工的な校正用サンプルの色収差を計測し,その色収差を補正していたため,観察対象の生体試料により引き起こされる色収差を補正できなかった。

研究では,画像取得法と計算方法の両面から開発を行なった。画像取得法では,観察試料の中にある同一の対象物を多色で染め分ける方法や,通常はフィルターでカットしてしまう余分な蛍光を使って観察するなど複数の方法によって,観察試料の色収差により色ズレした画像を取得することに成功した。

このように撮影した画像と,今回開発した新しい計算方法である「四象限位相相関」を用いて,複雑な色収差量を高精度に測定することに成功した。観察試料により変化する色収差のため,従来は3次元で約100-300nmの補正精度しか得られなかtったが,今回の方法を用いれば,3次元で約15nmの色収差補正精度を達成することができた。

この方法により,近年飛躍的に分解能が向上した超解像顕微鏡の画像を正しく解釈できるようになる。色ズレのない顕微鏡画像を用いれば,生体分子間の距離を高精度で計測できるようになり,従来は電子顕微鏡でしか行なえなかった計測が,蛍光顕微鏡で細胞を生かしたまま簡単に行なえるようになる。

NICTでは,色収差補正精度を更に高めるとともに,色ズレのない顕微鏡画像を用いた応用研究を行なう予定。また,バイオの研究進展に役立てるため,開発した高精度色収差補正ソフトウェアを無償で公開している(ニュースリリースにリンクあり)。

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