理研ら,中性子寿命の仕組みの一端を確認

理化学研究所(理研)および米カリフォルニア大学バークレー校らの国際共同研究グループは,世界最高性能のスーパーコンピュータを複数用いて,中性子の寿命を決めている「軸性電荷gA」の最も精密な計算を実現し,これまでの実験値とほとんど矛盾しないことを示した(ニュースリリース)。

中性子は原子核内では安定だが,原子核外に取り出されると15分程度で陽子に転換してしまう。「ベータ崩壊」と呼ばれるこの転換は,中性子を構成する素粒子のクォークやグルーオンと,標準理論における弱ゲージボソンの相互作用によって引き起こされる。

通常の電荷が光と物質の相互作用の強さを表すように,gAは弱ゲージボソンと物質の相互作用の強さを表す。近年,gAと中性子寿命は二つの実験手法で非常に精密に測定されているが,両手法で得られた中性子寿命の間には約9秒の差があり,この差は新たな崩壊モードの存在の可能性を示している。

今回,国際共同研究グループは,スーパーコンピュータと最新の計算アルゴリズムを用いて,中性子寿命を決めるgAに対して,「量子色力学」に基づく精密な理論計算に成功し,実験値とほとんど矛盾しない結果を得た。

今後,さらに計算の高精度化を進めることで,理論計算と実験結果に差異が生じれば,それは素粒子物理学の標準理論を超える新しい物理学の兆候となるか,あるいは原子核内の世界に対する理解を根本的に変えることとなるとしている。

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