東北大ら,有機超伝導体における光の増幅現象を発見

東北大学,中央大学,名古屋大学,分子科学研究所らの研究グループは,有機超伝導体に極めて強い光パルスを照射した瞬間,光が増幅される現象(誘導放出)が起こることを発見した(ニュースリリース)。

研究グループは,パルス幅数フェムト秒の極超短パルス光が拓く非線形フォトニクスの舞台を,超伝導体へ拡げ,さらに超伝導の機構解明に用いることができないかと考えた。そこで,6フェムト秒のレーザー光を用い,ポンププローブ法によって,有機超伝導体の非線形光学効果を調べた。6フェムト秒は原子が動く時間スケールよりも短いため,原子の運動によって物質が暖まったり壊れたりすることもない。

ポンププローブ法によって有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brにおける誘導放出のスペクトルやその時間プロファイルを詳しく解析したところ,通常の励起状態からの誘導放出や,その他の非線形光学効果では説明できないことがわかった。量子多体効果を考慮した理論シミュレーションによれば,極めて強い光をこの物質に照射した場合,電荷が偏った状態の振動によって,この誘導放出が起きることがわかった。

この振動は,同期現象と呼ばれる非線形効果に例えることもできる。有機超伝導体を構成する分子間の距離や相対角によって,電荷が分子間を振動する周期は様々に異なるが,強い光電場と電子間のクーロン反発によって,それらが、同一のリズムで振動をすることが可能になるという。

さらに,誘導放出の強度は,超伝導の転移温度付近で異常な増大を示す。研究で観測された誘導放出の時間応答と温度依存性は,超伝導の微視的な機構(クーパー対の形成)に,電子間のクーロン反発が重要な役割を果たしていることを示している。

銅酸化物高温超伝導体や有機超伝導体では,電子-フォノン間の相互作用を引力の起源とするBCS機構以外の機構が長年議論されてきたが,「相互作用の時間スケールを実測する」という新しい方法によって,この問題が明らかになる可能性があるという。

「非線形フォトニクスによって超伝導の機構を解明する」というこの研究は,最先端レーザー技術に加え,有機結晶における化学圧力の制御,精密ナノ薄膜制御,量子多体理論の各分野をリードする最先端の研究アプローチを有機的に組み合わせることによって初めて実現したもの。

これにより,銅酸化物や鉄ヒ素系の高温超伝導体においても機構解明が期待できるとする。より高い(室温に近い)超伝導転移温度を持つ物質の創製や超伝導の光制御が可能になるという。また,アト秒時間精度の干渉計やアト秒X線を用いた実験で観測することにより,超伝導体のアト秒ダイナミクスを明らかにしたいとしている。

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