産総研,太陽エネルギーで高選択的にナイロン原料を合成

産業技術総合研究所(産総研)は,酸化物の半導体光電極を用い,太陽光エネルギーを利用したシクロヘキサンの直接酸化によりナイロンなどの原料であるKAオイル(シクロヘキサノン+シクロヘキサノール)を常温・常圧下で高い選択性(約99%)で合成する技術を開発した(ニュースリリース)。

近年,光触媒電極を用いて,太陽光から水や炭酸ガスを原料として水素や簡単な有機物(燃料)を合成する研究が活発に行なわれている。KAオイルは現在,高温・高圧下で多大なエネルギーを使用して製造されている。シクロヘキサンの酸化によるKAオイルの合成は,選択性を上げる制御の難しい酸化反応であり,新規プロセスの開発が強く求められている。

飽和炭化水素であるシクロヘキサンのC-H結合は非常に強固であり,結合の切断や活性化には高温でエネルギーを投入したり,特殊な酸化剤を用いたりする必要がある。高い電圧をかけて切断する方法ではKAオイルはほとんど生成しないが,今回,酸化タングステン薄膜の半導体光電極を用いて,わずかな外部電圧をかけて疑似太陽光を照射すると,KAオイルが選択的に合成できることを見いだした。

酸化タングステン薄膜の半導体光電極は,大気下で簡単に作製できる。作製した半導体光電極と対極を一室型反応容器中に配置し,シクロヘキサンと硝酸を含む反応溶液を用い,酸素が溶存している状態で光電極に疑似太陽光照射を行なうとKAオイルが生成した。

外部電圧をかけると生成速度は劇的に向上し,最大で6倍程度まで達した。なお,作製した酸化タングステン半導体光電極は複数回利用しても問題なく動作した。一方,疑似太陽光を照射しないと2V以下の外部電圧では電流は流れず,KAオイルは生成しなかった。また,酸素が存在しないとKAオイルは生成しなかった。

今回の反応のように酸素を用いた酸化反応やラジカル中間体を経由する反応は選択性を向上させるのが難しいが,反応で得られた酸化生成物を分析するとCO2生成は非常に僅かであり,KAオイルの生成物選択性は99%以上と,開発した酸化物半導体光電極システムは非常に選択性が高いことが分かった。

太陽エネルギーを利用した光電気化学的な反応で,工業的に付加価値のある化学品であるKAオイルを,安価なシクロヘキサンと酸素から常温・常圧下で高選択的に合成できたことは,難度の高い有機合成反応を行なう際に光電気化学的な反応による合成が有用であることを示すもの。

研究グループは,反応に必要な外部電圧を太陽エネルギーによって大きく低減させた光電気化学的な有用化学品製造の実用化を目指し,有機系と無機系の両方でさまざまな高効率な反応の開発を継続するとしている。

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