東北大,グラフェンを用いた光書込みメモリを開発

東北大学の研究グループは,原子オーダーの厚みを持つシート材料であるグラフェンナノリボン(GNR)を用いて,耐環境性に優れた新型メモリの開発に成功した(ニュースリリース)。

光が照射されたところの電子状態が一時的に変化し,さらにその状態が光照射後も長時間維持されるパーシステント光伝導(PPC)と呼ばれる現象が半導体材料では古くから知られている。このPPCを活用することで光書き込みによる不揮発性メモリ等の応用が期待されている。

これまでこのPPCという現象は3次元のバルク半導体においてみられる現象だったが,近年原子オーダーの厚みからなる原子層シートにおいてもPPCが発現することが報告され,フレキシブル不揮発性メモリ等の応用に向け大きな期待が集まっている。しかしながら原子層シートによるPPC発現は特定の環境下のみに限られており,実用に向け大きな障壁となっていた。

今回研究グループは,独自の手法で合成したグラフェンシートがナノメートルオーダー幅の1次元リボン構造をとったGNRという一次元原子層物質を使い,さらに表面をプラズマ処理により機能化することで,様々な環境下でも安定に動作するGNR-PPC不揮発性メモリの開発に成功した。

不揮発性メモリとして実現する上では,“書き込み”,“読み出し”,“消去”という三つの基本動作を実現する必要がある。この中の“書き込み”は光照射で,“読み出し”は電流値の計測でそれぞれ実現できるため,もう一つの必須要素である“消去”の動作実証を試みた。その結果,GNRの下部に設置したゲート電極にパルス的に高電圧を印加することで,光照射により変調した電流値がもとの光照射前に戻ること,つまり“消去”動作が可能であることが明かとなった。

さらに,この三つの基本動作を繰り返し行なった結果,“書き込み”,“読み出し”,“消去”動作がいずれも繰り返し安定に動作可能であることを確認し,不揮発性メモリとしての動作実証に成功した。さらにメモリの情報保持時間が72h以上とこれまでの同様の報告に比べ25,000倍以上長時間化することに成功した。また,約4000本のGNRを集積化したGNR-PPC不揮発性メモリの開発にも成功した。

この手法で形成したメモリは水中でも動作することが可能であり,耐環境性に優れたフレキシブル不揮発性メモリやナノスケールスキャナー,各種生体センサー等への幅広い応用に貢献が期待されるとしている。

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