名大ら,「温めると縮む」新材料を開発

名古屋大学は,物質・材料研究機構(NIMS)との共同研究で,新しいメカニズム「原子内電荷移動」による「温めると縮む」新材料を開発した(ニュースリリース)。

近年における産業技術の高度な発達は,固体材料の宿命とも言える熱膨張すら制御することを求めており,熱膨張を制御する材料として,温めると縮む「負熱膨張材料」が注目されている。負熱膨張材料としては,β-ユークリプタイトやタングステン酸ジルコニウムなどの酸化物が知られ,これまでは,特に安価で環境にもやさしい β-ユークリプタイトが実用されてきた。しかしこれらの従来材料は負熱膨張の度合いが大きくなかった。

そこで近年は,相転移にともなう体積変化をある温度幅でじわじわと起こさせることで大きな負熱膨張を実現する試みがなされ,ビスマス-ニッケル酸化物,鉛-バナジウム酸化物などの新材料が見出された。

しかし,これら「相転移型」負熱膨張材料の多くは,結晶の方向によって伸び縮みの比率が大きく異なり,繰り返される温度変化で歪みや欠陥が入り,機能が劣化する欠点があった。また,磁性転移や電荷整列転移のような多くの原子の間で協力的に生じる現象による負熱膨張では,機能が結晶の大きさに左右され,1ミクロン程度の微粒子で巨大な負熱膨張を実現することができなかった。

そこで研究グループは,サマリウム(Sm)に含まれる電子が,どの電子軌道に入るのか,すなわち(4f)6の電子配置か(4f)5(5d)1の電子配置かでSm原子の大きさが大きく変わる「原子内電荷移動」の現象に注目した。この現象は,基礎物理学の分野では「価数揺動」としてよく知られている。

一硫化サマリウム(SmS)では,この二つの電子配置の安定度はほとんど同じで,常温常圧では前者になる一方で,小さな刺激や元素部分置換で後者へと相転移することが知られていた。今回,研究グループは,SmSのSmを一部Yで置き換え,負熱膨張を実現した。体積変化量は最大で4%を超え,結晶のどの方向にも同じ比率で伸び縮みする負熱膨張材料としてはこれまでで最大という。

研究グループは,開発された新材料は,今後広く機器の性能の向上や安定化,省力化,長寿命化等に貢献できるとしている。

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