OISTら,冷却で膨張する磁性結晶の仕組みを解明

沖縄科学技術大学院大学(OIST)らは,水が凍るときに膨張する氷のように,磁性結晶のCdCr2O4が温度が低くなるにつれて負の熱膨張を示すことを解明した(ニュースリリース)。

多くの物質は加熱すると膨張し,冷却すると収縮する「熱膨張」という性質を持っている。高温になればなるほど物質中の原子がより活発に動き,原子間の結合が伸びることで膨張する。一方,氷やゴムバンドなどいくつかの物質は,冷却すると膨張するという負の熱膨張(NTE)の性質を示す。

今回,CdCr2O4を用いた実験で,この物質が特定の条件の下,すなわち低温および高磁場の存在下で負の熱膨張を示すことが明らかになった。

研究グループは巨大電磁石を用いて,30テスラという非常に強い磁場を創り出し,負の熱膨張をCdCr2O4の構造により説明した。クロム(Cr)イオンは鉄と同様にN極とS極があり,磁性がある。しかし鉄とは異なり,この物質の外側ではクロムは磁気効果を持たない。内部構造においてのみ磁気が影響する。

クロムイオンは他の原子が間にはさまった磁気イオンの組み合わせの格子を形成する。それぞれの磁気イオンは,近隣のイオンからの影響を受けて磁気モーメント(スピン)の方向が決まる。

ところがCdCr2O4では,近隣イオンからの相互作用がスピンの方向を秩序立てることはないため,いわゆる「フラストレーションの状態」となる。これらのイオンは,磁性体の内部エネルギーが最小になるように格子構造に対して力を加える。この効果は「ひずみによる秩序」として知られる。

CdCr2O4の負の熱膨張を理解するためのカギは,熱がスピンのゆらぎに蓄えられる方法と,これが格子とどのように関連しているかにあるという。CdCr2O4の場合,フラストレーション状態における相互作用のため,ゆらぎによる熱吸収は非常に効率的。そしてこのゆらぎは,クロムイオン間の結合を短くし,加熱されるにつれて物質は収縮される。この現象はエントロピーの概念によって理解することができる。

研究グループは,CdCr2O4がどのように機能するかを理解することは,フラストレーション状態を持つ他の物質の研究においても,何を探求すべきかがわかり,研究指針として役立つとし,負の熱膨張の珍しい特性は,さまざまな機器や医療用途の設計にも使用できるようになるとしている。

その他関連ニュース

  • 東大ら,結晶多形の最終構造の形成過程を解明 2020年07月02日
  • 筑波大,新たなダイヤモンド結晶構造を予言 2020年07月02日
  • 東大ら,レーザーで相転移「悪魔の階段」を解明 2020年06月09日
  • 九大ら,プロトン伝導性電解質材料を開発 2020年05月29日
  • 早大ら,無機固体中の電子の相転移を発見 2020年05月12日
  • 東工大ら,ペロブスカイトに圧力印加で新知見 2020年03月30日
  • 東北大,アモルファスシリコンを液体から直接作製 2020年03月23日
  • 東大ら,キラル結晶が発現するスピン特性を解明 2020年03月05日