理研,光受容による遺伝子発現機構を解明

理化学研究所(理研),の研究グループは,植物が環境変化を経験したときに起こる翻訳変化の一端を解明した(ニュースリリース)。

植物は,発芽後,光を受容すると,遺伝子発現プロファイルを劇的に変化させ,形態形成を始める。植物は主に青色光・赤色光・遠赤色光を受容するが,それら単色光の受容による遺伝子の発現変動については,まだ多くの謎が残っている。

ゲノム上の遺伝子の情報(塩基配列)は,まずメッセンジャーRNA(mRNA)に「転写」される。そして,mRNAは細胞小器官の一つであるリボソームに運ばれ,タンパク質に「翻訳」される。

mRNA上には,「ORF」と呼ばれる領域があり,ORFには「mORF」,「uORF」,「sORF」の3種類がある。mORFはタンパク質をコードする主要な領域で,sORFはタンパク質をコードしない(ただし短いペプチドを生産する)短い領域となる。uORFはmORFより上流に位置する短い領域で短いペプチドを生産し,mORFの翻訳を阻害することが知られている。

mORF,sORF,uORFのどれもタンパク質またはペプチドに翻訳されるが,植物の光応答によるタンパク質・ペプチドの生産量(翻訳量),生産効率(翻訳効率)の変化は分かっていなかった。

研究グループは,リボソームプロファイリング法を用いて,暗所で発芽したシロイヌナズナを青色光下へ露光したときの翻訳量の変化を全ゲノムで調べた。まず,リボソームがORF上を3塩基からなるコドンごとに移動する性質を考慮し,実際に翻訳されているORFを予測した。

その結果,203個のsORFと1,378個のuORFを含む35,000個を超えるORFが翻訳されると見積もられた。それらのうち,40個のsORFと164個のuORFを含む6,000個を超えるORFの翻訳効率が,青色光への露光によって有意に変化することが分かった。

さらに,同一mRNA上で,暗所ではuORFが下流のmORFの翻訳を抑制させる傾向にあった。しかし,その中で,青色光への露光によってuORFによる翻訳阻害を免れる下流mORFも存在することが分かった。

この研究成果は,ゲノムから転写されたRNAの蓄積量の変化に加えてリボソームによる翻訳量の変化も,青色光への応答時の各ORFの発現量を決定する重要な因子であることを示すという。

またこの研究成果は,今後,作物の環境応答における遺伝子発現レベルの望まれる変化を人為的に起こす技術の確立につながるとしている。

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