筑波大ら,原子層物質半導体への電子注入法発見

筑波大学,東京大学の研究グループは,2次元原子層物質である二硫化モリブデン薄膜を用いた電界効果トランジスタにおいて,外部電界と二硫化モリブデン層間の積層構造を活用することにより,半導体中の蓄積電子の空間分布を自在に制御できることを明らかにした(ニュースリリース)。

遷移金属カルコゲン化合物やグラフェン等の2次元原子層物質は,その形状や電子的な特性から種々の機能性デバイスへの応用が期待されている。特に,完全に閉じた2次元的な原子結合ネットワーク上に広がる2次元の電子系を用いることにより,半導体電子デバイスの機能特性を向上させることが期待されている。

二硫化モリブデンは代表的な原子層状の遷移金属カルコゲン化合物の一つ。これまでに,単層ならびに薄膜状態での二硫化モリブデンを用いた半導体デバイスが作成され,その動作報告がなされてきた。しかし,デバイス中での電荷分布は明らかになっていなかった。さらに,ゲート絶縁膜表面に存在する不純物が,二硫化モリブデン上を流れる電流を阻害するためによる半導体特性の低下も問題となっている。

そのため,電界効果により原子層状物質積層系に蓄積される電子分布の解明と,それに基づいた半導体特性低下を抑制する方法の開発が望まれていた。

研究グループは,量子論に立脚した計算物質科学の手法を用いて,二重ゲート電極を持つ二硫化モリブデン薄膜半導体のゲート電界印加下での電子物性のシミュレーションを行なった。

ここでは,結晶方位を揃えて積層した2層二硫化モリブデンと,結晶方位を捻って積層した2層二硫化モリブデンに着目し,電界が誘起する電荷分布に対する,二硫化モリブデン層の積層配向と電界強度の影響を調べた。

シミュレーションの結果,強電界印加下で弱く電荷が注入された,捻り積層2層二硫化モリブデンにおいて,85%の電荷が片層に局在することが明らかになった。他方,配向が揃った2層二硫化モリブデンにおいては,そのような電荷の局在現象はみられず,2層全体に広がった電荷分布が見られた。

捻り積層2層二硫化モリブデンにおいて見出された電荷の局在現象は,二硫化モリブデン薄膜内の一部の層にのみ電荷を注入し,それを伝導チャネルとして用いることが可能であることを示唆しており,すなわち,電荷の少ない二硫化モリブデン層を伝導層に対する保護膜として用いることで,二硫化モリブデン薄膜において安定な半導体特性が実現可能であることを予言した。

これにより,二硫化モリブデンをはじめとする遷移金属カルコゲン化合物を用いた半導体技術の著しい向上が期待されるとしている。

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