産総研,近赤外光でプラスチックの劣化診断

産業技術総合研究所(産総研)は,近赤外光でプラスチック(ポリプロピレン)の劣化を診断する技術を開発した(ニュースリリース)。

破断伸びとは,試料が破断されるまでの引張伸び率で,ポリプロピレン部品の機械特性を示す重要な指標。ポリプロピレンの劣化が進むと,破断伸びが減少する。今回,あらかじめ劣化処理を行ない,劣化の程度が異なるポリプロピレン試料を作成し,それらが吸収する近赤外光(光吸収スペクトル)を計測するとともに,破断伸びを計測した。

今回,ポリプロピレン試料に1600nm~2000nmの近赤外光を照射してスペクトルを測定した。ポリプロピレンは劣化の進行に伴って近赤外光の吸収特性が変化するため,近赤外スペクトルの形状変化から劣化を推定できる。つまり,各波長での光吸収の大きさ(吸光度)に回帰係数を掛けて足し合わせて,破断伸びが算出される。

しかし,スペクトルのような膨大な数のデータでは,個々の回帰係数を算出するのは困難なので,今回は機械学習を活用して回帰係数を効率的に導き出した。その結果,算出したテストデータの破断伸びは,機械試験で測定した実際の破断伸びとよく一致した。さらに回帰係数を詳しく調べたところ,ポリプロピレンの固体構造の変化と,近赤外光の吸収の変化が直接的に相関していた。

今回開発した技術は,引張試験のように材料を破壊することなくポリプロピレンの光の吸収を数秒間測定するだけで,その破断伸びを精度よく予測できる。非破壊,リアルタイムでプラスチック製品の品質を評価できる今回の技術の導入が,製造コストの大きな削減につながるものと期待される。今回用いた装置は透過光だけではなく反射光でも近赤外スペクトルの測定が可能で,試料の厚みや形状に応じて透過光と反射光を選択できる。なお,測定時間は6秒だった。

また,ポリプロピレンと同様に結晶構造を持つプラスチックであれば,測定データの機械学習を行なうことで,他種のプラスチックの劣化診断に適用できる可能性があるという。

研究グループは今後,今回の劣化診断技術を自動車部品,建設資材の品質管理やプラスチック部品のリサイクルに適用するため,企業への橋渡しを積極的に図る。また,「材料診断プラットフォーム」では,この技術を含めた複数の診断技術の統合を進め,「材料の総合病院」として,企業からの診断依頼に幅広く対応するとしている。

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